失敗しないポンプの選び方

公開日: 2026年9月17日

ローラーポンプ・ダイヤフラムポンプ・ギヤポンプ・遠心ポンプの違いをわかりやすく解説

ポンプにはさまざまな種類があり、同じ液体を送る場合でも、必要な流量や圧力、配管、洗浄方法などによって適したポンプが変わります。

しかし、ポンプ選定を間違えると、

  • 必要な流量が出ない
  • 洗浄やメンテナンスに想定以上の時間がかかる
  • 消耗品の交換頻度が多くなる
  • 液体に適さずトラブルが発生する
  • 導入後に別のポンプへ見直しが必要になる

といった問題につながる場合があります。

そのため、ポンプは価格や仕様だけでなく、

  • 何を送るのか
  • どれくらいの量を送るのか
  • どの程度の圧力が必要なのか
  • 洗浄や液体の切り替えは必要か

といった条件を整理したうえで、適したポンプを選ぶことが大切です。

今回は、代表的な4種類のポンプについて、それぞれの特徴や得意な用途、注意点を比較します。

ポンプは「容積式」と「非容積式」に分けられる

ポンプは、液体を送り出すしくみによって、「容積式ポンプ」と「非容積式ポンプ」に大きく分けられます。

容積式ポンプは、ローラーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギヤポンプなど、ポンプ内部の空間の容積を用いて液体を押し出します。

非容積式ポンプは、羽根車を回転させるなどし、液体にエネルギーを与えるポンプです。

遠心ポンプなどが代表的です。

4種類のポンプを比較

比較項目 ローラーポンプ ダイヤフラム

ポンプ

ギヤポンプ 遠心ポンプ
自吸性
薬液への対応
高粘度液
定量送液
大流量
洗浄性
液体切替
連続循環
表の見方
:得意な用途
○:条件によって対応可能
△:用途によっては注意が必要

※一般的な傾向であり、実際の性能は製品仕様や使用条件によって異なります。

ローラーポンプとは

ローラーポンプは、柔軟なチューブをローラーで順番に押しつぶし、チューブが元に戻る力を利用して液体を送る容積式ポンプです。

液体が接触する部分をチューブ内面に限定できることが、大きな特徴です。

柔軟なチューブをローラーで押しつぶして送液するポンプは、『チューブポンプ』『チュービングポンプ』『ペリスタルティックポンプ』『しごきポンプ』などと呼ばれることがあります。ただし、呼び方や対象範囲はメーカーや業界によって異なる場合があります。

得意な用途

  • 少量~中流量の送液
  • 充填・分注・薬液注入
  • 食品・飲料・化粧品・医薬・試薬などの送液
  • 液体を頻繁に切り替える工程
  • 研究・分析装置への組込み

選ばれる理由

ポンプ本体の接液部をチューブ内面に限定できるため、接液チューブを交換することで、液種変更時の洗浄作業を軽減できる場合があります。

また、自吸性があり、回転数による流量調整にも対応しやすいのが特徴です。

注意点

チューブは送液経路であると同時に、ローラーによって繰り返し圧縮される部品でもあります。

そのため摩耗による交換が必要で、チューブの状態によって流量が変化する場合があります。また、ローラーの本数やチューブの特性などによって脈動も発生します。

ダイヤフラムポンプとは

ダイヤフラムポンプは、ゴムや樹脂などの膜を往復させ、ポンプ室の容積を変化させて液体を送る容積式ポンプです。

得意な用途

  • 酸・アルカリなどの薬液移送
  • スラリーや廃液の移送
  • 自吸が必要な用途
  • ドラム・タンクからの汲み上げ
  • 防爆環境での送液
  • 水処理設備や薬液注入

選ばれる理由

ダイヤフラムによって駆動部と液室を隔離でき、一般的な回転軸用の軸封を必要としない構造にできます。

自吸性があり、接液材質の選択肢も多いため、薬液やスラリーなどに対応する製品があります。エア駆動式では、防爆環境で使用できる製品もあります。

注意点

膜が往復するため、吐出に脈動が発生します。また、ダイヤフラムや弁などの消耗部品があり、エア駆動式ではコンプレッサーやエア配管などの設備も必要です。

ギヤポンプとは

ギヤポンプは、ケーシング内の歯車を回転させ、歯車とケーシングの間に入った液体を吸込側から吐出側へ運ぶ容積式ポンプです。

得意な用途

  • オイル・燃料油などの油類
  • 接着剤・シロップなどの高粘度液
  • 溶融樹脂・ポリマー
  • 油圧・潤滑システム
  • 連続した送液
  • 比較的高い吐出圧力が必要な用途

選ばれる理由

ギヤポンプは、油類をはじめとする比較的粘度の高い液体の移送に使用されます。吐出量は回転数に応じて調整しやすい一方、実際の流量は液体の粘度、差圧、内部すき間などの影響を受けます。

注意点

歯車とケーシングのすき間が小さいため、固形物や研磨性粒子を含む液体では摩耗や噛み込みに注意が必要です。また、空運転やせん断に弱い液体にも注意が必要で、吐出側を閉じる締切運転では安全弁などの対策が重要になります。

遠心ポンプとは

遠心ポンプは、モーターで羽根車(インペラ)を回転させ、液体に速度エネルギーを与え、その一部を圧力に変えて送液する非容積式ポンプです。水などの低粘度液を大量に連続して送る用途で広く使われています。

得意な用途

  • 工場の冷却水循環
  • 一般給水
  • 排水
  • ボイラー給水
  • 農業用水の供給
  • 浄水・下水処理
  • 大流量の連続移送

選ばれる理由

低粘度の液体を大流量で連続して送ることができ、製品の種類や容量も幅広くあります。給水や循環設備など、一般的な設備に組み込みやすいことも特徴です。

注意点

一般的な遠心ポンプは高粘度液に不向きで、吐出量も配管抵抗や揚程の影響を受けます。また、機種によっては起動時の呼び水が必要で、空運転やキャビテーションにも注意が必要です。

ポンプ選びで確認したい4つの条件

ポンプを選ぶときは、ポンプの種類だけを見るのではなく、実際の使用条件を考慮します。

1. 液体の性状

  • 粘度
  • 固形物の有無
  • 腐食性
  • 発泡性
  • 気体の混入
  • せん断への弱さ
  • 温度
  • 衛生・無菌要求

特に薬品を扱う場合は、ポンプ本体だけでなく、チューブやシールなどの接液材質まで確認する必要があります。

2. 必要な性能

  • 必要流量
  • 吐出圧力
  • 全揚程・吸込揚程
  • 定量精度
  • 連続運転時間
  • 脈動の許容範囲
  • 充填なのか、連続移送なのか

同じポンプでも、必要な流量や圧力によって適した機種は変わります。

3. 設備条件

  • 呼び水が可能か
  • 空運転の可能性
  • エア源の有無
  • 防爆の必要性
  • 設置スペース
  • 電源
  • 外部制御
  • 洗浄方法
  • 配管径・配管抵抗

ポンプ単体の性能だけでなく、既存設備との組み合わせまで考える必要があります。

4. 保守とコスト

  • 消耗品の価格
  • 交換頻度
  • 交換作業時間
  • 分解・洗浄時間
  • 電力・圧縮空気などの運転コスト
  • 故障時の停止時間
  • 部品供給やサポート体制

本体価格だけでなく、導入後の保守や運転にかかるコストまで含めて考えることが大切です。

用途別に考えると選びやすい

ここまで各ポンプの特徴を紹介してきましたが、実際の現場では「どんな用途で使いたいか」から考えると整理しやすくなります。

例えば、

  • 液体を頻繁に切り替える工程
     → ローラーポンプが候補
  • オイルや接着剤など高粘度液の連続移送
     → ギヤポンプが候補
  • 薬液やスラリーの移送
     → ダイヤフラムポンプが候補
  • 冷却水や給水など大量の液体を循環させたい
     → 遠心ポンプが候補

というように、用途によって選ばれるポンプは異なります。

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。

例えば、同じ薬液でも粘度や必要な流量によって適したポンプは変わりますし、高粘度液でも洗浄頻度や衛生管理の条件によって選択肢が変わる場合があります。

それでもローラーポンプが選ばれる理由

ここまで見ると、それぞれのポンプに得意な分野があることが分かります。

その中でローラーポンプが選択肢になる理由の一つが、接液部をチューブに限定しやすく、液種変更や保守の作業を簡略化できる点です。

液体を頻繁に切り替える設備では、接液チューブを交換することで、ポンプ本体の分解洗浄を省ける場合があります。ただし、タンク、継手、ノズルなど、チューブ以外の接液部については別途洗浄が必要です。

食品、飲料、化粧品、医薬、研究・分析など、液体の切り替えや接液部の管理を重視する用途では、この特徴がメリットになります。

一方で、ローラーポンプにもチューブの摩耗や流量変化、脈動、チューブ材質の適合確認など、考慮すべき点があります。実際の液体、粘度、背圧、回転数、チューブの状態などを含めて選定することが大切になります。

まとめ

ポンプ選びでは、単純に「この液体ならこのポンプ」と決めるのではなく、液体の性状、必要な流量・圧力、設備条件、保守性まで含めて考える必要があります。

また、同じ液体を扱う場合でも、

  • 液体を頻繁に切り替えるのか
  • 大量に循環させたいのか
  • 高粘度液を移送するのか
  • 薬液やスラリーを扱うのか

によって適したポンプは変わります。

最終的には、送る液体と実際の使用条件に合わせて選ぶことが、ポンプ選定で失敗しないために大切です。